【PL 第30節 vsエバートン】16歳の眩い輝きと、ミケル・アルテタの変化
後半44分。焦燥感に駆られるエミレーツスタジアムの空気を変えたのは若干16歳の若武者だった。
44分からの約8分間でその若武者は、この試合をPL史に残る試合へと昇華させてしまった。
試合後、ミケル・アルテタはこう語っている。
「我々がやっているのは思い出と瞬間を作ることだ。何年経っても、今日スタジアムにいた人々は『あのシーズンの大事な試合で16歳の少年がゴールを決めた日、私はエミレーツにいた』と語るだろう」
そう、この日。2026年3月14日、アーセナル所属のフットボールプレイヤーであるマックス・ダウマンはアーセナルの2点目のスコアラーとなり、PL最年少得点者記録を更新したのだ。
そして1点目の起点もこの16歳の左足からだった。その左足から繰り出されたクロスボールが、ゴール前の混乱を発生させ、ポルトガルからやってきた怪物ストライカーのPL11ゴール目の起点となった。
この2つの貢献は、必然だったと言える。
後半30分を過ぎる前、エミレーツがざわつく。ダウマンが56の番号が刻まれたユニフォームに着替えているのだ。そして今シーズン、バスクからやってきたスペイン人と変わる形でピッチに送り込まれる。
そこから試合が終わるまでの約25分間、最も期待感のあるプレーを見せていのは、キャプテンマークを背負った7番でも、10番でもなく、この56番だったのだ。
緩急のあるドリブル。スピードを上げる場面と、停滞する場面。ボールの持ち方から、この16歳の少年がただ、エミレーツに見学をしにきただけではないことが分かる。逆サイドで燻っているブラジル人ドリブラーとは期待感がまるで違った。
そして90分に差し掛かる前に、アーセナルがエバートンのゴールをこじ開けることになる。
もちろん試合が終わった後のエミレーツはダウマン一色だっただろう。次の日のロンドンの朝刊は16歳の少年が飾ることになる。
ただ多くのグーナーがもう1人、関心をした人物がいる。
それはアーセナルを率いるミケル・アルテタである。
このスペイン人監督はこの日16歳の少年に15分以上の出場時間を与えた。それも優勝を左右する、負けられない試合の中でである。そして交換を告げたのは、今シーズン最も酷使されているプレイヤーの1人である、スビメンディだった。今までのアルテタであれば、スビメンディを変えることはなかっただろう。
しかしこの日はスビメンディを下げ、ベンチにいたPL優勝経験のある9番ではなく、この間まで中学生だった、16歳を起用したのだ。その決断に呼応するように、エミレーツは沸き、16歳は期待に応えた。
この日ミケル・アルテタはPL優勝にふさわしい監督になったのかもしれない。
そしてアーセナルの背中を押すように、その2時間後に行われた、マンチェスター.Cはハマーズ相手に勝ち点を落とした。
ガナーズが22年ぶりの栄冠にまた1つ近づいた。
アーセナルに風は吹いている。後はそれに乗れるかどうかだ。
